1995年、九州の福岡市に建設されたマンションが傾いていることが発覚。
7階建て、総戸数60戸のマンションです。
原因は、マンション建設で重要な基礎の下に設置される杭が、支持地盤に届いていなかったこと、と発表された。
届いていなかった杭は、25本のうちの8本が届いていなかったという。
専門的な言葉も多く、理解がしにくいに部分もあるので、マンション販売30年の経験から、わかりやすく解説したい。
マンション建設に杭は何本必要なのか
そもそもマンション 建設に杭は、何本必要で、何メートル必要なのか、ということです。
一言でいえば、「建設場所の地盤次第」ということになります。
杭の必要性は、マンンションのような大型建築物に限りません。
木造2階建ての一戸建てでも、地盤によっては、杭が必要になります。
建物を支える重要な部分ですので、支えが十分でなければ、建物は傾いてしまいます。
何本必要なのか?何メートルがあれば適正なのか、は建物の規模と地盤の関係性によります。
地盤の固さは、「N値」という、日本工業規格(JIS)が定めた数値で判断されます。
地盤が硬ければ、必ずしも、杭は必要ではありません。
実際には、地表から数メートル下に、硬い岩盤層があり、N値が50以上あれば、マンションのような大型の建物であっても、杭打ちの必要がなく、そのまま岩盤の上に、建物の基礎工事が可能とされています。
軟弱な地盤であれば、木造一戸建てのように、小規模で軽い建築物であっても、数m間隔での杭打ちが必要になります。
地盤調査が重要
マンションに限らず、小規模の2階建て木造戸建であっても、工事を行う前には、必ず地盤調査を行います。
地盤調査によって、何メートルの杭が何本必要になるのかを、計算をして判断します。
建物が完成した後は、目に見えなくなる部分ですが、建物の基礎を支える重要部分であり、当然コストもかかる部分だからです。
今回の九州福岡市のマンションだけでなく、時々こうした手抜き工事が発覚します。
原因で考えられるのは、施行管理上の見落としから、無理なコストダウンによるものまで、複数の要因があり得ます。
問題発覚から原因が明白になるには、膨大な時間とお金
今回の九州福岡市の事例では、住民側が調査結果を突きつけた後に、事業主側の調査が行われ、原因が明白になったようです。
傾きに気付いた住民側が訴えてから、20年以上経過しているとのことです。
このように、住民が日々の生活の違和感を感じ始めてから、事業主が責任を認めるまでには、膨大な時間とお金がかかります。
ですので、現実としては、なかなか難しい要素があります。
所有者で組織されている管理組合で、一致団結すること。
事業主が自ら、調査に乗り出すには、証拠の提出が必要になること。
そして、そのためには、所有者が自らの資金で、調査を行わなければならないこと。
などが考えられます。
いずれも、時間とお金が膨大にかかることです。
意見がまとまるまで、大変であったことだろうと、推察されます。
中には、途中で諦めた方も複数いたのではないかと思います。
一戸建ての場合では、所有者は、単独で建築会社との交渉を行うことになりますので、泣き寝入りをしてしまうケースは、少なくないと感じます。
現実の中古戸建の仲介の場面で、建物の傾きが判明し、売主に対して、一戸建てではなく、土地売却として、おすすめする場面があるからです。
問題が発覚した物件|そのままでの売却はほぼ不可能
マンションの場合、被害を受けている方が複数であることから、マスコミでもニュースとして取り上げられることがあります。
今回の九州福岡市のマンションのように、です。
住民側は、マスコミが味方についた感じがして、事業主やゼネコンとの交渉が進む可能性が高まります。
しかし、反面、多大なリスクもあります。
今回の事例でもそうですが、マンション名等も公表されてしまうことで、マンション売却の道は、非常に厳しくなります。
欠陥のあったマンションとして、世の中に知られてしまうからです。
「場所がいいから多少傾いていても構わない」というマンション購入者は存在しません。
ですので、マンション売却を検討していた売主にとっては、大損失になるのです。
対して、一戸建ての場合、家の傾きが判明したとしても、マスコミがニュースにすることは、ほとんどありません。
ただし、中古不動産の売買において、家の傾きは、欠陥が推定される状況にありますので、通常の一戸建てとしての、売却は諦めねばなりません。
仮に、気づかないフリをして売却したとしても、その後に買主から、改修工事か損害賠償請求、あるいは売買契約の解除につながってしまいます。
物件の引き渡し、所有権の移転が完了していたとしても、その責任を逃れることはできません。
ですので、建築会社の責任を追及できる期間のうちに、交渉を進めるべきです。
新築時の契約から、10年を超えてしまい、次の方に売却をする場面では、建築会社の責任は問えず、次の買主に対する責任は、売主である自分が持つことになるからです。
中古物件の売買においては、売主は、物件の責任は自分ではなく建築会社にあると言い逃れることができないからです。
買主にとっての売買契約の相手は、建築会社ではなく、売主だからです。
まとめ
マンションや一戸建てが傾いてしまうという、大変な状況が起きた場合に関連して、解説をいたしました。
一般的に考えて、新築時から10年経過していて、今回のケースのような状況が発生していなければ、特に心配することはないと考えられます。
現在は、有料になりますが、インスペクション(建物診断)という方法で、安心を得る方法もあります。
不動産を売却する場面で、今回事例のような気になる点があれば、不動産仲介会社に率直に相談してみることをお勧めします。
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